SHALIMAR -愛の殿堂-
「ホント……君って優しいよね。優しくて
いい子」
優しい、と言われるのはまぁ悪くない気がしたが『いい子』と言うワードは何だか子供扱いされているようでちょっとイヤだな。まるで範囲外と言われてる気もする。
それこそ子供のように口を尖らせてると
「いいと思うよ?」
突如言われて「え?何が…?」と表情で彼女を見ると
「いいと思う。モテなくても。だって君が言った通り君が好きなたった一人で充分じゃん?
君が好きな唯一の女に好かれれば。
ホントはさ……この過去話はずっと君に黙ってようと思ったんだ。
何かさ、みっともないし、浅はかな私を知られたくないって
思ったんだ」
彼女は俺から視線を逸らすと、雨でくすんだ街並に目をやった。その視線はどこか遠くを彷徨っていた。
しとしとと降る雨の粒が傘に跳ねて音を立てる。
この雨は―――
彼女が流した涙のようだ。
いや、実際彼女がそのとき泣いたのかなんて分からないけど。でも、
もし泣いてなかったら、彼女の代わりに空が泣いてくれてるんだ。
何故だかそう思えた。