SHALIMAR -愛の殿堂-
名前、教えてください。
「私、君とベランダで交わす会話、楽しかった。
いつしか君と話せることが待ち遠しくなった。
だからタッパー返してもらう口実で、また君と話せたらと思ってた」
そ……そーだったんだ……
あんなにしつこくタッパーにこだわってたから、どうして?とか思ったけど。
「君は私の話をいつも楽しそうに聞いてくれて、素直で正直で、飾らなくて、何か分かんないけどいつも一生懸命で、そのくせ自信なさそうにしてるし」
何か分からないけど一生懸命、てのは当たってるし、『自信なさそう』はそのまんま、まさに『自信がない』だ。
「でもね、君はいつもまっすぐで―――
忘れかけていた純粋な何かを毎回、毎回手に入れられた気がしたんだ。
いつしかその会話で私は癒されてた。
でもこんな卑怯でみっともない私を知ったら君はきっと『次を』望まなくなると思って
怖かった」
俺は自分の部屋の扉のドアノブに掛けていた手を離した。
俺も……
俺も怖かった―――
彼女も同じ気持ちでいてくれたことに驚きを隠せず、俺は彼女を凝視するしかできなかった。
「この前、酔ってたかもしれないけど『好き』って言ってくれて嬉しかった。
でも本当の私は、君が思うような女じゃない。幻滅されると思うと怖かった。
だから……」
彼女の言葉を最後まで聞かずに俺はドアの前から離れると、彼女の元へゆっくりと向かった。
幻滅―――……?
そんなことするか。
だって俺は決めたから。
「幻滅、なんてしません。あなたの過去に何があろうが、俺はそれを含めて
気持ちに変わりはありません。
俺はあなたが
好きです。
部屋に―――入れてくれますか?」