SHALIMAR -愛の殿堂-



彼女はちょっと微笑んで、ドアノブに鍵を差し込んだ。


「どうぞ。この後の話は―――私の部屋で話そう。


続きも、そのまた続きも


ベランダ越しじゃなくて、今度は私の部屋で……たくさん話そう。


君の部屋でもいいけど」






それって―――……


俺を受け入れてくれるってこと?


俺の告白にOKしてくれるってこと……?


はじめて女の人に告って、漠然だがドラマや漫画のシーンでは『私でよければ』とか『ごめんなさい』ってどちらかの台詞がセオリーだと思ってたけど。どちらかが……いや正直言うと半分以上『ごめんなさい』だと思ってたが…


彼女は鍵を回し、扉を開ける。


キィ…


ドアが軋む音がして、ゆっくりと開かれた。


ぽっかりと空いたその空間から、彼女が纏っている香りが一層強く流れ込んでくる。


もう、俺が何となく想像してた、ドラマや漫画の返事の台詞じゃなくてもいいや。





「私たちの千夜一夜物語、今日からここではじめよう」




「はい」


俺はしっかり頷いて、彼女の元に向かった。


二度目に入る彼女の部屋は前と何ら変わらない筈なのに、その景色はキラキラと輝いているようだった。


パタン


部屋の扉が閉まる。





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