SHALIMAR -愛の殿堂-


半分雨に濡れた彼女の肩を、おずおずと……ぎこちない動作でそっと抱きしめる。





「好きです」




もう一度、ちゃんと酔ってないときに、言いたかった言葉。


酔っぱらってる、と思われたくなかった。


予想もしないタイミングで、しかも二回目だし、何だかかっこ悪いけど、でもかっこつけても俺には似合わない気がしたし。


「私も。


いつからか君のことばかり考えてた」


シェヘラザードが笑う。


「今日から、彼氏彼女だね、私たち。ベランダ越しじゃなくて、壁を乗り越えていつでも話をしよう。


また次の話で引き止めるんじゃなくて、今度は時間を気にせずたくさんたくさん





ここが私たちの王国。



愛の殿堂、だよ」




そうだね、ここが俺たちの新たな王国。


「あの、ところで一つ聞いていいですか?」


ずっと気になってたこと。


「何?」彼女が怪訝そうに目を上げて「年齢なら……」とちょっと言い辛そうに眉をしかめる。


年齢?まぁ年上だろうことは分かるけど、俺が知りたいのはそこじゃない。それにいくら年上だろうが気にすることない。


俺が心底知りたい、と思うのは―――





「名前、何て言うんですか?」





彼女はにっこり微笑み、


「そっか、私名乗ってなかったね。今更だけど、


俺の耳元でそっと耳打ちして


名前を教えてくれた。


赤い唇から甘い吐息に乗って発せられた言葉は






「私の名前、


――――………」








マジすか?






~END~





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