SHALIMAR -愛の殿堂-
「ちゃんと謝りたかったの」とサキちゃんは今風な感じではなくちょっと古風な考え方で、そこが好きだったけど
何!?俺、わざわざフられるためにデート誘ってたわけ!?
しかもサキちゃんの好きな相手があのタケだと!?
まぁ……タケはいいヤツだし、勉強できるし、真面目だし。本人が思ってるほど顏も悪くないし。
でも
嘘だろーーーーー!!!
――――
―
何をどう思って“ここ”まで来ちまったんだろう。気付いたらタケのマンションの下だった。
「俺の青春を、恋を返せ!」と一言言ってやりたかった。変な誤解をされたうえ、徹底的な失恋をしたわけだからなっ!
恨みつらみを聞いてもらう。今日はオールだ!
と言う意味で缶ビールをいっぱい買いこんで、怒りからか勢いからかぜぇぜぇ肩を揺らしていると
「えー、素麺には絶対生姜だよ」
「ミョウガっスよ。絶対ミョウガ」
「ミョウガって物忘れするって言うよ。だから生姜」
「なんスか、その理屈」
なんスか、その会話。
今日も相変わらず会話が変だなー…ホントに二人付き合ってんのか?と言う感じでタケ&由紀恵さんが近づいてくるのを待っていると
「あ」
由紀恵さんの方が先に俺に気づき「やほ~」と気軽に手を振ってくる。もう片方の手は……
タケの手に繋がれていて
タケはこっちが恥ずかしくなるぐらい顏を真っ赤にしてる。
何だ……ちゃんと“恋人”してるじゃん。
ちょっと安心した。