人間消去アプリ
慌てて立ちあがることも、座ったまま椅子を引きずることもせず、私の前まで歩み寄ってくる。


そして、私に向かって、手を差しだした。


「理央ちゃん、大丈夫?


保健室に連れていこうか?」


「だ、大丈夫だよ……」


「無理しなくてもいいよ。


今、吐きそうだったんでしょ?」


「そうだけど、保健室に行くまでじゃないよ」


「あのね、理央ちゃんが大丈夫でも、沙織は大丈夫じゃないの。


ほら、行こっ」


そう言って、私の腕を掴む沙織。


体が前方にかたむき、半ば強制的に教室を出ていく形になった。


うしろからすずねと円歌の声が聞こえてくる。
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