人間消去アプリ
ちっ、いいチャンスだったのに。


なんでこのタイミングで電車が来るのよ。


小さく舌打ちをして、座っていたベンチに戻る。


ホームにいた人たちが全員乗り込んだ直後、電車が動きだした。


沙織や他の乗客が乗っている電車を、なにも言わずに見送る。


円歌がホームに戻ってきたのは、その20分後だった。


ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返し、苦しそうな顔をしている。


ベンチ近くの柱に体重を預け、私のほうを見ようとしない円歌。


こんなことを思うのも今さらかもしれないけど、円歌ってバカだね。


私に【人間消去アプリ】を使ったと疑われたくせに、私をフォローするなんて。
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