人間消去アプリ
ベンチに座っている円歌を、横目でじっと見つめる。


ねぇ、円歌。


私がすぐ近くにいること、気づいてないよね?


私、円歌が駅に着く前から、ずっといるよ。


薄手のコートを羽織っていて、帽子をかぶった人物が、私なんだよ。


怪しいと思わないの?


まぁ、怪しまれるのは嫌だけどね。


心の中でそうつぶやく私を尻目に、円歌が深いため息をついた。


「はぁ……」


なにに対してのため息なのか、私ならわかる気がする。


自分のスマホをなくしたことに対してだろう。


案の定、円歌がため息のあとにこうつぶやいた。


「なんでスマホがないのよ……」
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