人間消去アプリ

☆☆☆

午後8時30分。


【人間消去アプリ】に言われたとおり、私は朔間高校の近くの、歩道橋に来ていた。


夜は寒くて冷たい風が吹いているので、今日は厚手のジャケットを着た。


手袋を忘れてしまったことに後悔しながら、ジャケットのポケットに手を突っ込む。


息を吐くと、白い吐息が上へと上っていくのが見える。


冬のはじまりを告げるかのような風に吹かれて、体を震わせたそのとき。


「あれっ、理央ちゃん」


近くから聞き覚えのある声が聞こえた。


振り向いて、やっぱり、と思った。


「沙織……」


ベージュのコートを羽織っている沙織がいた。
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