人間消去アプリ
「ううん、まだ使ってない」


使っていないし、使おうとは思わない。


アプリを消去しようとしても、消せないから。


心の中でそうつぶやく私を尻目に、沙織が真剣な眼差しを向けたまま、こう言った。


「じゃあ、試しに誰かを消去してみない?」


「えっ……?」


いったいなにを言っているの?


私、【人間消去アプリ】を使うつもりはないんだけど。


パチパチとまばたきをする私だが、沙織はそんな私をスルーして話を続けた。


「理央ちゃん、【人間消去アプリ】をインストールしても、使おうとは思ってないでしょ」


「うん……」


「せっかくインストールしたんだから、一回も使わないなんてもったいないよ」
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