BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
ラズベリーのような甘い香りが藤川の胸元から漂い、心が休まっていく。
訳のわからない男に捕らわれ、思ったより緊張していたみたいだ。
「悪かったな、藤川。桜花の校内で、お前の大切な女を危険な目に合わせた」
特攻服が妙に似合う佐々木海里が、藤川へ謝罪する。
「いーえ。どこにいても狙われるくらい、魅力的な女ってことですから。海里さんたちのせいではないですよ」
愛想笑いで応えた藤川は、私の体をそっと離し、軽く手を握るだけにとどめた。
私はもっと、藤川に抱きしめていて欲しかった。
でも悔しくて絶対にそんなことは言えない。
──どうして、駄目だとわかっていながら惹かれていくんだろう。