BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


その後、あの男の仲間を足止めしていた咲都が合流し、藤川は佐々木海里と話があるとかで姿を消した。

美愛は美愛で小野寺理希と二人きりで過ごせることになり、幸せそうな笑顔を見せていた。

椎名深影は自分のクラスに戻ってしまったらしい。

残った私と咲都は、彼らの用事が終わるまで、校内を探索することにする。

まずは安全と言われた3年5組を目指す。



「ねえ。藤川先輩に、欠点とかないの?」

「急に何だよ?」

「嫌いになりたいの。どうしても」

「おい、嫌いになりたいってことは、すでにお前……」


何かに気づいたみたいに咲都が顔をしかめる。


「このキズをつけたのは、藤川先輩なんだよね」


私は咲都に見えるように、シャツワンピースの袖を少しだけ捲る。

そこには相変わらず、三日月の形の傷痕があった。


「誰かを傷つけても平気な人のことなんて、嫌いになるのは簡単なはずだよね」

「七瀬……」


咲都は私の差し出した腕に触れ、言いづらそうに切り出した。
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