BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「お前はもう忘れたのかもしれないけど。この傷は、皇世が直接やったわけじゃないんだぞ」
「……え? 嘘でしょ」
だって、藤川自身も否定しなかったし。
この傷は自分のせいだって、後悔している風だった。
「『コウ』って……。藤川皇世のことじゃないの?」
「やっぱり誤解してたか。あいつは人をいじめるような奴じゃないって、前にも言ったよな」
じゃあ、本物の『コウ』は誰なの?
コウは確かに転校した記憶があるから、この街、この学校にはいない?
それに、藤川がセイちゃんをいじめていた『コウ』じゃないとしたら。
私が藤川を嫌いになる理由が、なくなってしまう。
これ以上、好きになりたくなかったのに。
もっと好きになってもいいということになる……。
「あ。貴女、ユキの言ってたお客さんだね」
3―5の前に到着したら、あの妖艶な浴衣姿の人に出迎えられた。
「どうぞ、入って」
促されるまま、私と咲都はヘアメイクカフェという怪しげな催しに顔を出すことになった。