BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

教室の中はカフェとメイクコーナーに分かれていて、咲都はカフェの方に案内され、コーヒーを頼んでいた。


私の方は、綺麗で妖艶な人にメイクコーナーに連れて行かれ、テーブルを挟んで向かい合わせに座らされる。

服が汚れないようにとケープをかけてくれて、変装用だった眼鏡も外された。


「貴女の肌の色や顔立ちだと、淡い薄紫とか似合うかも」


慣れた手つきでメイクブラシを私の顔に滑らせる。

細長い指の先には、艶やかなネイル。

浴衣に合わせてなのか、濃い紫色に染められている。


「何か悩みがあるの?」

「えっ」

「そんな顔してる」

「……はい。気になる人がいるんですけど、このまま好きになってもいいのか、迷ってて」


目の前の優しいこの人は、私の悩みを受け止めてくれそうな気がして。

自然と自分の気持ちを打ち明けていた。
< 104 / 147 >

この作品をシェア

pagetop