BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
教室の中はカフェとメイクコーナーに分かれていて、咲都はカフェの方に案内され、コーヒーを頼んでいた。
私の方は、綺麗で妖艶な人にメイクコーナーに連れて行かれ、テーブルを挟んで向かい合わせに座らされる。
服が汚れないようにとケープをかけてくれて、変装用だった眼鏡も外された。
「貴女の肌の色や顔立ちだと、淡い薄紫とか似合うかも」
慣れた手つきでメイクブラシを私の顔に滑らせる。
細長い指の先には、艶やかなネイル。
浴衣に合わせてなのか、濃い紫色に染められている。
「何か悩みがあるの?」
「えっ」
「そんな顔してる」
「……はい。気になる人がいるんですけど、このまま好きになってもいいのか、迷ってて」
目の前の優しいこの人は、私の悩みを受け止めてくれそうな気がして。
自然と自分の気持ちを打ち明けていた。