BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「その人の過去が引っ掛かっていて、好きにはならないって決めてたのに。最近、その過去が始めからないもので、ただ誤解していただけだって知って……」
「過去……ね」
「あったはずの障害が取り払われて、自分でも混乱してるんです。……幼なじみには反対されてるし、これ以上好きにはなりたくないのに」
アイカラーを私の瞼の上に乗せながら、その人は緩く唇を動かした。
「過去がどうあれ、貴女の気持ちはどうなの? 誰かに反対されたからって、好きになるのをやめられるの?」
「…………」
「……って、言って欲しかったんじゃない?」
悪戯っぽく、その人は笑いをこぼす。
「きっと誰かに自分の想いを認めてもらいたかった、ってところかな」
言われてハッとした。
確かに、誰かに相談したところで、今さら気持ちを消すのは難しい。
藤川に彼女ができたとか、よっぽどのことがない限り。
「……そう、かもしれないです」
深くうなずくと、目の前の綺麗な人が私の髪をそっと撫でてきた。
「良かった。元気が出てきたみたいだね。目の輝きがさっきと違う」