BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「ありがとうございます。おかげで気持ちがはっきりしました」


目を見てお礼を伝えたら、「どういたしまして」と華やかな笑みを返された。




ヘアメイクが完成した頃。

教室に椎名深影が入ってきた。


佐々木海里と同じ、黒い特攻服を着ている。
耳にいくつも刺さったシルバーのピアスと相まって、特に違和感はない。


「余ったから、これやる」


ドサリと焼き鳥の入ったパックを私と綺麗な人との間に置いていく。


「もしかして焼き鳥を焼いてたんですか?」

「そうだよ、この格好でさ」


椎名深影は肩をすくめ、軽く苦笑いする。


「俺の前は海里も焼いてたよ」

「えー、見たかったな」


思わずつぶやいてしまう。


「海里のときは、ギャラリーが凄かったよ」

「わぁ、やっぱり。人気あるんですね。私の高校にも噂が届くくらいですから」


椎名深影と話していたら、奥の窓際のテーブル席から咲都が睨んできたので背筋を伸ばす。


「あの。ヘアメイクのお代は?」

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