BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
藤川が低く声を放った途端、教室内が変に静まり返った。
真っ直ぐに見据えてくる、目力の強さが恐ろしい。
椎名深影からサッと離れ立ち上がる。
藤川に怒られる前に、咲都のそばにでも逃げよう……。
「──二人ってさ。どういう関係?」
気まずい沈黙を破ったのは椎名深影だ。
特に藤川の不機嫌さを気にする様子もなく、薄く笑っている。
「俺たちがどういう関係でも、アンタに渡す気はないんで。
勝手に触らないでもらえますか…ね」
わざとらしく敬語を使い、私の肩を抱き寄せた。
そのまま、教室の出入口へ向かったとき──。
「何このクラス、空気悪いねー?」
突然、場違いに明るい声が響き、皆がドアの方へ視線を向ける。
「もしかして修羅場?」
一斉に強い視線を浴びたにも関わらず、平然と笑う彼は、見覚えのある顔をしていた。
確か佐々木海里の従兄弟で、佐々木春馬。
執事の黒い衣装を纏った彼は、にこにこと愛想を振りまいている。
それを見た周りのスタッフや客が騒ぎ始め、いつの間にか周囲の注目は彼に移っていた。