BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「あと、俺から離れるの禁止な」
「そんなの……無理じゃない? そもそも私とは学年が違うし」
四六時中、生徒会長の藤川と一緒にいるなんて、どんな噂を立てられるやら。
藤川のせいで女子に嫌がらせを受ける羽目にはなりたくない。
「とりあえず登下校の際は、俺か咲都と常に行動すること。いいな?」
「……はい」
渋々うなずくと、満足したのか私の頭をなぜか優しく撫でてきた。
「なんで、藤川……先輩は、私にかまうの?」
彼女でもないのに頬や手にキスしたり、知らない男達から守ってくれたり。
「桜花の人が、私のことを『伯王の姫』って呼んでた。それと関係あるの?」
まるで私のことが大切だと言っているみたいで。
危うく勘違いしそうになるほど。
梶谷兄妹と仲が良いこと以外、接点はないし。
藤川に想いを寄せる女の子は、有り余るほどいるはずなのに。
どうして私、なのだろう。
「七瀬さ。俺のこと下の名前で呼ぶ約束したよな」
「……あ」
話題をそらすように指摘され、思い出す。
そういえば、交換条件を出されたのを忘れていた。