BLACK TRAP ~あの月に誓った日~



(あんなこと、しなければ良かった……)


2年の教室へ向かう廊下を歩きながら、最大級の後悔を含んだ溜め息をこぼす。


つい、勢いで藤川の頬にキスしてしまったけど。

藤川の耳が赤くなっていたのは『冗談のつもりだったのに恥ずかしいヤツ…』という赤面かもしれないし。


次に会ったとき、どんな顔をして会えばいいのか。

もし藤川に私の気持ちがバレていたら、と思うとゾッとする。


(絶対、勘づかれないようにしないと……!)


心の中で誓っていたら、美愛が「おはよー」と言いながら話しかけてきた。


「七瀬、ちょっと聞いて?」

「うん。何?」


この前の文化祭デートの話かな、と思い背筋を伸ばす。


優希奈(ゆきな)さんって、理希くんのお姉さんなんだって。血が半分繋がっているみたい」

「えっ、そうなの?」

「理希くんから直接聞いたとき、ホッとしちゃった。二人、すごく仲が良さそうに見えたから……」


確かに、桜花高の文化祭中、あの二人の仲の良さは友人以上のものだった。

窓辺で寄り添って、小野寺理希があの子の髪を撫でていたくらいだ。

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