BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「私ね。もう、佐々木海里のことはいいかな。実際にそばで見て、ただの憧れだって改めて気づいたんだ」
「へえ~、これは他に好きな人でもできちゃったかな?」
「っ、別に、そういうわけじゃないから」
ニヤニヤと美愛が笑顔を向けてくるので、悟られないよう顔をそむける。
「だってねぇ。あの佐々木海里をあきらめられるぐらいの相手って、なかなかいないよー?」
すでに私の好きな人が誰だか、知っているようなそぶりをしてくる。
「知らない……、何のこと?」
しらばっくれた私はすばやく教室に入り込み、美愛の悪戯な顔から逃げた。
私があいつのことを好きかどうかなんて、まだ決まったわけじゃない。
気の迷いかもしれない。
そう、心の中で言い聞かせながら。