BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
*
昼休み。
廊下の窓から中庭を見下ろしていたら、藤川の姿を見かけた。
誰かと一緒にいる……?
それが女の子かどうか気になった私は、すぐに階段を下り、中庭へ向かった。
──けれど、私がたどり着いたときには、すでに藤川の姿はなくなっていた。
代わりに、見覚えのある人影を見つける。
「あれ? セイちゃん」
「七瀬。久しぶりだね」
サラサラとした色素の薄い髪が、穏やかな風で揺れている。
きょろきょろと辺りを見回す私に気づいたらしく、大きな目を瞬かせ、可愛らしく小首をかしげた。
「どうしたの、誰か捜してる?」
「あー、うん。見間違いだったかも」
「もしかして藤川のこと?」
「えっ……そう、だけど」
「藤川なら、さっき少し話したよ」
セイちゃんは艶のある赤い唇を緩やかに引き上げた。
だとしたら、一緒にいたのはセイちゃんだったということになる。
私は密かに安堵していた。
「七瀬って──藤川と付き合い始めたの?」