BLACK TRAP ~あの月に誓った日~



昼休み。

廊下の窓から中庭を見下ろしていたら、藤川の姿を見かけた。


誰かと一緒にいる……?

それが女の子かどうか気になった私は、すぐに階段を下り、中庭へ向かった。


──けれど、私がたどり着いたときには、すでに藤川の姿はなくなっていた。

代わりに、見覚えのある人影を見つける。


「あれ? セイちゃん」

「七瀬。久しぶりだね」


サラサラとした色素の薄い髪が、穏やかな風で揺れている。

きょろきょろと辺りを見回す私に気づいたらしく、大きな目を瞬かせ、可愛らしく小首をかしげた。


「どうしたの、誰か捜してる?」

「あー、うん。見間違いだったかも」

「もしかして藤川のこと?」

「えっ……そう、だけど」

「藤川なら、さっき少し話したよ」


セイちゃんは艶のある赤い唇を緩やかに引き上げた。

だとしたら、一緒にいたのはセイちゃんだったということになる。

私は密かに安堵していた。


「七瀬って──藤川と付き合い始めたの?」
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