BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「まさか。付き合ってなんかいないよ」
「本当に? ……よかった」
セイちゃんは安心したように目を細める。
「少し、七瀬に話があるんだ。時間、大丈夫?」
私がうなずくと、彼は木陰に私を誘導し、二人で一緒に草むらに座り込んだ。
他にも何組か中庭にいたけれど、話し声は聞き取れない範囲。
木漏れ日が彼の髪に降り注ぎ、穏やかに煌めいている。
空を見上げながら、彼は口を開いた。
「藤川のこと、七瀬はどう思ってる?」
「……どう、って」
藤川のことを好きかもしれないなんて、誰にも言ったことがない。
認めたくない自分もいる。
「藤川は教えてくれないの? 過去のこと」
「うん……」
「じゃあ、俺が教えてあげる」
なぜかセイちゃんは私の左手を握り締め、視線を合わせてきた。
子どもの頃、こんな風に二人で話したことがあったと思い出す。
懐かしい……。