BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「藤川が七瀬のそばにいたがる理由は、知ってる?」


穏やかな喋り方。
こちらを見つめる柔らかな眼差し。

小学校時代のあの頃と同じで、綺麗だし可愛い。童顔で、一つ先輩とは思えない。


そんなセイちゃんを、私は好きだったんだよね。何となく、思い出してきた。


「私が藤川先輩の親友の、幼なじみだから?」

「それもあるかもしれないけど。……本当の理由は、自分が伯王高校のトップでいるため、なんだよ」


繋がれていた手に、力が込められる。


「七瀬は伯王の姫候補だからね。蒼生高も椿高も、桜花も。みんな七瀬のこと狙ってる。そんな子の“特別な存在”になれたら。実質、この辺り一帯の頂点に立ったようなものだよ」


え……
じゃあ、私をいつも助けてくれるのは、自分の名声のため?

自分が一番になりたいからであって、私を大切に思っているから、とかではないんだ。

ただの都合のいい思い込み。
勘違い、か。

何だか胸の中がもやもやする。
< 125 / 147 >

この作品をシェア

pagetop