BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「藤川先輩は『コウ』の仲間だったんだよね?」
「そんな話、誰が言ってたの?」
不思議そうにセイちゃんが首をかたむける。
同時に、彼に握られていた手が解放された。
「いや……私が、何となくそうなのかなって思いついただけ」
「藤川はね。俺の大切な親友を傷つけたんだ。だから今でも、許してない」
セイちゃんの大きな瞳の奥に、仄暗い光が浮かぶ。
『コウ』の存在はともかく、セイちゃんが藤川と対立関係にあったのは本当みたいだ。
私は。藤川の罠にかかって利用されていただけだったの?
逃げられないように。
藤川のことを好きになるように、仕向けられていた?
全て、藤川自身の目的のために。
「やっぱり、七瀬には藤川の近くにいて欲しくないなぁ」
空を見上げ、セイちゃんは呟く。
「俺のそばにいた方が安全だと思うよ? 昔と違って、俺にも仲間がたくさんできたから」
「そうなの……?」
実を言うと少し心配していた。
また、いじめられたりしていないかと。