BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
これからまたセイちゃんのことを好きになるかは未知数だけど。

いまだ謎の多い、不透明な存在の藤川を追いかけ続けるより、健全な気がした。

見るからに優しそうだし。

どう考えても、女の子を幸せにしてくれるタイプなのはセイちゃんの方。


「七瀬って。俺のこと、ほとんど忘れちゃってるでしょ」

「えーっと……」


まずい。フルネームを自然に聞き出す方法はなかったかな。

会っていない期間が長すぎて、いまだに思い出せない。


「少しずつでいいから、知っていって欲しいな。俺は昔みたいに、七瀬と仲良くしたいと思ってるから」


じっと見つめてきたと思ったら、瞳が不意に近づいてきて。

私の前髪の辺りをそっと撫でていった。


「あ……、あの! 一つ聞きたいことがあって」


気恥ずかしさから咄嗟に話をそらすと、セイちゃんは小首をかしげた。


「……何?」

「藤川先輩がコウじゃないなら、コウは今どこにいるの? この学校にいるの?」
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