BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「さあ……、俺がこの街に戻ってきたときには、いなかったけど」
「……そうなんだ」
『コウ』が行方知れずと聞き、私はどこか安心していた。
このまま現れない方が、平和でいいのかもしれない。
コウたちに嫌がらせをされて傷つく姿は、もう見たくないから。
この優しい笑顔をずっと守りたい。
それは今も昔も変わっていない。
「七瀬。生徒会に入ったんだって?」
責めるような響きが、彼の声音ににじんでいた。
「セイちゃん、知ってたんだね。……駄目だった?」
「生徒会は、やめた方がいいよ。目立つし、あいつらから狙われやすくなると思う」
「あいつら?」
「七瀬のことを手に入れたがっている蒼生高の奴らとか。もちろん、伯王の人間も」
「たぶん、大丈夫だよ。生徒会には幼なじみもいるし、最近は一緒に登下校してるから。一人よりは安全でしょ?」
「そう……。でも、もし危険な目にあったら、すぐに呼んでね。助けに行くから」
「うん。ありがとう」
昔と違って頼もしくなったセイちゃんを見つめ、私は笑顔で頷いた。