BLACK TRAP ~あの月に誓った日~



放課後。生徒会室を覗いてみると、窓際で頬杖をつき、物憂げに外を眺めている藤川がいた。

こちらには気づいている様子がなく。

その横顔がいつもの自信に満ちた表情とは違い、儚く見えた。

触れたら、あっさり消えてしまいそうな――。


私は知らず知らずのうちに、先日の気まずさも忘れて、彼のそばに近づいていた。

一瞬でも藤川を抱きしめてあげたい衝動に駆られ、慌ててその思いを打ち消す。


やっぱり。彼を目の前にすると、セイちゃんとは全然違う緊張感でいっぱいになる。

胸がきゅっと締めつけられるような感じ。



藤川ら私の存在に気づいた途端、いつもの鋭い目つきに戻り、取り繕うように立ち上がった。


「……何だよ、七瀬か」

「私で悪かったですね。妙にたそがれてる雰囲気だったから、どうかしたのかと思って」


わざと冷たく言うと、藤川は小さく笑って、また窓の外へ視線を落とした。


校庭には帰宅途中の生徒の姿がある。

その中には、以前藤川が教室で仲良く喋っていた女の先輩もまぎれていた。
< 130 / 147 >

この作品をシェア

pagetop