BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「今、なんて言った? セイちゃん、とか言わなかったか?」

「言ったけど、何? 問題ある? 幼なじみだし、別にいいでしょ」


藤川の発言を無視し、生徒会室の扉に手をかける。

すると、そこに藤川の手のひらが重なった。


「……駄目。あいつの本性知ってんの?」


ふわりと微かな香水の匂いに包まれる。

手の甲だけでなく、背中にまで藤川の体温を感じ、心拍数が急激に上がっていく。


「本性って?」


平静を装い、聞き返す。

セイちゃんは昔から優しいし、裏の顔なんかなかったはずだ。

かよわくて、頼りなくて。
他の男子からいじめられていたのを、私が守ってあげていたくらいなんだから。


「あいつの近くには寄るなよ。危険な目に遭いたくないなら」

「それ……、セイちゃんも言ってた」

「何?」

「藤川先輩の近くには、いない方がいいって。生徒会も辞めた方がいいって、言われた」


どっちの言うことが本当なの?

考えてみれば、藤川と関わるようになってから、知らない男たちに捕らわれたり、危ない目に遭ったりしている気がする。


だとしたらこれ以上、藤川のそばにいるのは危険?

セイちゃんを選ぶのが正解?
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