BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
誘惑に勝てない自分が馬鹿みたい。
いつも藤川の罠にはまってばかりで。
冗談だって、面白がっているだけだって、わかっているのに。
「あとで七瀬の部屋に行っていい?」
「ダメです」
心を鬼にして藤川の誘いを却下する。
「お願い。七瀬の苦手な数学、教えるからさ」
「……え?」
「七瀬の好きなモンブランも買って行くから」
「え?」
「目、輝いてる。じゃ、決まりね」
「……ちょっと勝手に決めないでよ」
上手いこと誘導されて、いつの間にか私の家に来る流れになっていた。
藤川が私の家に入るのは初めて、かもしれない。
最終的に強く断れなかったのは、私が彼ともう少し一緒にいたかったから。
いつか自分の気持ちに素直になれる日が来るのだろうかと、遠い目をしてしまう。
藤川だって、素直に甘えてくれる可愛い女の方がいいと思う。
あの先輩みたいな、可憐で甘え上手とはかけ離れた自分に、溜め息がこぼれ落ちた。