BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
藤川は昔、セイちゃんの親友を傷つけたという。
過去は過去、今は今だから関係ないと思いたいのだけど。
もしそれが事実なら、藤川との関係は考え直さないといけなくなってくる。
私が信じたい、信じていたいのは……。
「お礼、もらっていい?」
頭の中を整理しているうちに、話は切り替わっていたようで。
抵抗しない私の唇は、一瞬にして藤川に奪われていた。
微かに重なった唇が、私の下唇をなぞったあと、ゆっくりと離れていく。
「今日は妙に素直だな。顔、そむけたりするかと思った」
あっさりと受け入れたことに、彼は意外だと言いたげに目を見開いている。
「……別に。ぼうっとしてただけだから」
まさか『私も藤川としたかったから』なんて言えるはずもなく。
照れを隠すためにうつむいて。
藤川が買ってきたモンブランを口にする。
ほんのわずかに洋酒の大人っぽい味が口の中に広がった。
「七瀬のモンブランさ。俺のと味が違うんだよね」
言われてみれば、この二つのモンブランはマロンクリームの色が違う。
淡い黄色と濃いチョコレート色。
「味見していい?」
「……どうぞ」