BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「さっきそこで皇世のお母さんと会ってね、ちょっと皇世の家に寄って行こうかって話になったの。そうしたら七瀬の靴があってびっくりしちゃって」
「そ、七瀬が襲われていたらマズイから、勝手に上がらせてもらったんだ」
「……お前ら、空気読めよ」
藤川は長めの前髪をかきあげ、やや不愉快そうに二人を睨む。
私としては助かったので、梶谷兄妹の訪問を歓迎するため笑顔を作った。
「二人とも、ごめんね。心配かけたみたいで」
「ほんとにね。でも、珍しくない? 七瀬が私達抜きで皇世と二人きりになるなんて」
美愛は不思議そうに私と藤川を見比べる。
「それが……ちょっと弱味を握られたというか」
「えー、何なに? 気になる」
「美愛には、今度こっそり教えるね」
「もしかしてサキト兄には言えない話?」
「うーん、まあ」
言葉を濁すと、咲都は眉をしかめた。
「俺に言えない話って何だよ」
「何でもないよ、たいした話じゃないし」
「……あ」
美愛が突然、宙を見つめたまま声を上げる。
「言えない話で思い出したけど、私も実はあるんだ、言いづらい話」