BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

部屋の真ん中まで入ってきた美愛は、テーブル越しに私と藤川の前に正座する。

美愛の深刻そうな様子に、ゴクリと喉を鳴らした私だけでなく、藤川や咲都までもが息をひそめ彼女の告白を待った。


「実は私、好きな人ができて」

「す、好きな人?」


美愛にそんな人ができていたなんて。
久しぶりだし、喜ばしいことだ。


「でもその人……、伯王高と敵対してる桜花高校の人だったんだ」

「え、」


思わず唖然とし、低い声が出た。

桜花高校はこの辺りでは有名なヤンキー校で、昔から私達の高校とはあまり仲が良くなかった。


「しかも、あの、佐々木海里の友達らしいの!」

「はあぁぁ!?」


私と咲都の声が部屋中に響く。


密かに私は『桜花』という名称に再び反応していた。


佐々木海里の友人、ということは。
私の憧れの人とは別の人を指している。


大事な幼なじみの美愛と、好きな人がかぶらなくて良かったと胸を撫で下ろす。


藤川は呑気に――ではなく優雅にコーヒーを飲んでいた。
特に驚く様子はない。
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