BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「お前、なんでそんなヤツを好きになったんだよ? 馬鹿か? 相手にされるわけねーだろーが」


口の悪い咲都の怒りはさらに増してきたようで、ボキボキと指を鳴らし始める。

佐々木海里の友人というだけでここまで激怒するなら、私が本人に憧れていると咲都に知られたら……。


「だって。知らなかったんだよ。電車の中で親切にされて、うっかり好きになっちゃったんだから」

「俺は反対だ。どうせ遊ばれて終わりだろ」

「でもね、全然、ヤンキーって感じしなかったよ? 確かに髪は赤茶色だったけど」

「いや、髪が赤い時点で真面目キャラな可能性は薄いだろ」


黒髪短髪の兄に指摘され、美愛は膨れる。

佐々木海里の友人ということなら、美愛には気の毒だけど、悪い男ではない確率の方が低いと思う。


「そんなに気になるなら、俺がそいつのこと調べて来てやるよ」


テーブルに頬杖をついた藤川が唐突に口を開き、うっすらと笑った。


「ほんと? さすが皇世! 彼女がいるかどうかも、確かめてきてくれる?」

「ああ、いいよ。そいつの名前は?」

「名前はね、たぶんリキ。周りの友達がそう呼んでたから」
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