BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
Ⅱ バレンタインの罠



バレンタイン前日の夜、仕方なしにトリュフを多めに作り、あげる予定ではなかった藤川の分もわざわざ箱に詰めた。

ラッピングは、落ち着いたセピア色の袋とブルーのリボンで。


これを渡したら、藤川はどんな反応をするのだろう。

少しも嬉しくなさそうに、当たり前のように受け取るのか。
味がマズイと文句を言うか。

少しだけ不安でもあり、楽しみでもあった。





昼休み、幼なじみの咲都のいる二年の教室に向かっていたら、途中で廊下に妙な列ができていることに気づいた。

並んでいるのは全員女子で、しかも咲都の教室から続いているようだった。

みんなソワソワして、それぞれ何かプレゼントの包みを持っている。


「何の騒ぎ?」

咲都を戸口まで呼び出した私は、行列の方へ再び視線を向ける。


「ああ、あれだよ。皇世」

「え。藤川、先輩?」


窓際を見れば、最前列に綺麗な女の子と向き合う藤川の姿があった。


「ああ……、そんなに人気あるの? あの人が?」


何となく知ってはいたけど、ここまでとは。
軽くあきれてしまうレベルだ。
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