BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「それより、咲都にこれ渡しておくね」
「おー、どーもな」
私が差し出した毎年恒例のプレゼントを軽快な口調で受け取る咲都。
予想より大事そうに両手で受け取ってくれたので、意外に思い咲都を眺める。
「咲都……。まさか本命、誰からももらってないとか?」
「いや、あの行列見てたら、全部皇世に持ってかれてるのわかるよな」
「……まあ、そうだよね」
うなずいた私は同情の目を咲都に送った。
生徒会の副会長でもある彼は、人気がある方だと思うのに、色恋沙汰とは無縁なタイプ。
常に好きな人がいる美愛とは真逆ともいえる。
「お前こそ、本命に贈らなくていいのか?」
咲都は桜花に好きな人がいることを反対している癖に、そんなことを聞いてくる。
「いいの。他校に乗り込むわけにいかないしね」
放課後、藤川と一緒に桜花に行くことにはなっているけれど。
例え彼に会えたとしても、チョコは渡さないと思う。
私の気持ちはまだ、本気と憧れの境い目だから……。