BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
ふと見れば、教室の窓辺に寄りかかる藤川の前には、チョコを渡そうとする女子の行列がかなり減ってきていた。
私は咲都に断りを入れてから、ついでに藤川の列に並んでみる。
「──ごめん、悪いけど受け取れない」
前の子達の様子を見ていると、なんと藤川は片っ端からプレゼントを拒否していた。
(え。それなら並ぶ意味ないよね)
踵を返そうとしたとき、すでに私の番が来てしまっていた。
目の前には、私をじっと見下ろす藤川の姿。
仕方ない。
ここまで来て渡さないのも、相手に失礼だろうし。
「……あの、いつもお世話になっているので」
周りの目もあるので、どうしても他人行儀になってしまう。
綺麗な瞳に見つめられ緊張しながらも、そっとチョコの入った箱を差し出した。
そう、これはいつも助けてくれる、ただのお礼だ。