BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「もしかして……、セイちゃん?」
私の呼びかけに、彼は花開くように可憐に微笑んだ。
……思い出した。
小学生のとき、近所に住んでいて。
藤川と同様、途中で転校してしまったけれど、それまではよく一緒に遊んでいた。
『ナナ。いつも助けてくれてありがとう』
『もっと大きくなったら、今度は俺がナナのこと守るね』
可愛くて、女の子みたいで。
守ってあげたい存在だった。
私の…………初恋の人。
また会えるなんて思っていなかったから、予想外の再会にドキドキと胸が高鳴っていく。
小柄といっても160cmの私よりは5cm以上高く見えた。
男子の平均身長より低くても、小顔なのでバランスが取れている。
記憶の中のセイちゃんより、だいぶ大人びた印象の彼は、私に優しく微笑みかけてくれた。
「七瀬……」
「感動の再会のとこ悪いけど。今、七瀬は俺のだから」
清らかな雰囲気を破ったのは、遠慮のない藤川の声だった。
ひどく不愉快そうに腕を組み、セイちゃんのことを冷たい目で睨んでいる。
その姿に重なって、昔、私とセイちゃんの仲を邪魔する意地悪な男の子がいたのを思い出した。
『チビで、ひ弱なお前に、七瀬を守れるわけねーだろ』
名前は確か──。
「……そっか。七瀬は藤川の……、彼女なの?」