BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「まあ、そんなところ」

咄嗟に否定の言葉が出てこなかった私の代わりに、藤川が適当に答えてしまう。


「そうなんだね……。そういえば七瀬は小学生の頃、『強い人が好き』って言ってたよね。……良かったね、強い人が見つかって」


目を伏せたセイちゃんが少し寂しそうに笑う。


藤川も以前、同じことを言っていた。
私はどうやら本当に、過去に『強い人が好き』と宣言していたらしい。


「あの。藤川先輩とは、そんな関係じゃないですから」


きっぱりと弁解すると、藤川が不服そうにちらりと私を見た。


「……そうなの?」


セイちゃんは小首をかしげ、私と藤川を見比べた。


静かにセイちゃんの隣に移動した藤川は、自分よりもだいぶ背の低い彼の肩を抱き、耳元に何かを囁く。


その様子を見ていて、再び思い出したことがあった。


私は小学生の頃に、何度も男の子達に苛められるセイちゃんを守っていた。


記憶の中のあの子がセイちゃんなら、もう一人は……

セイちゃんを苛めていた主犯格──いかにも悪ガキな印象の男の子は。


──藤川、なの?
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