BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「そうじゃなくて。無理やり聞かれそうになったの。
……私が、誰のことを好きか」
「…………」
最近、あの男達はしつこく聞き出そうとしてくる。
私の好きな人なんて知って、どうするつもりなのか不思議で仕方がない。
「お前それ、絶対言うなよ」
「なんで?」
「弱みになる」
「……弱み?」
「あいつらがそれを知ったら、お前の好きな男、潰されるぞ」
「どういうことか、全然わからないんだけど」
私は夕陽を眺める藤川の隣に並び、不必要なほどに整った顔を覗き込む。
「七瀬。お前ほんと鈍いな。きっと、あいつらの中に、七瀬のことを好きな奴がいるんだろ」
私のことを、好きな人?
「で、お前に彼氏ができないようにするために、消すつもりなんじゃないのか。……嫉妬は怖いよなー」
他人事のように付け足し、藤川は私の手首を掴んだ。
確かに、好きな人が私のせいで怪我をされたら辛いものがある。というか申し訳ない。
「今日は家まで送る。またあいつらが待ち伏せしてるかもしれないからな」
そう言って歩き出す藤川は優しいんだか優しくないんだか、謎な男だ。
悪態をつきつつも、いつも私のことを助けてくれている。
たぶんそれは、私が彼の親友の幼なじみだから。
それ以外に私を助ける理由はないはずだった。