BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


放課後になると肌寒くなり、私は薄手のコートを羽織って外を歩いていた。

隣には悠然と歩く藤川。

桜花への道を案内するためだと言って私の手首を引き、それに仕方なく従っている。


そもそも、藤川自身は桜花に何の用事があるのか謎だ。

けれど質問しても、どうせはぐらかされるのが目に見えているのでやめておく。



桜花の校舎の端が見えてきて、もうすぐ彼に会えるかもしれないと思うと、緊張で足取りが逆に重くなってきた。


佐々木海里のことは、私が一方的に知っているだけ。


昨年12月。

友人達に誘われ、椿高校で毎年行われているクリスマスのイルミネーションを見に行ったときに、彼を初めて見かけた。

ちょうどその日、椿高の校庭には他校からたくさんの人達が集まっていて、まるでイベント会場のような雰囲気になっていた。

特に目立っていたのは濃紺のブレザーを着た10人ほどの集団。

その中に、彼はひときわ鋭いオーラを放って佇んでいた。
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