BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
ただそこにいるだけで、なぜか目を惹きつけられる。
他にも顔立ちの整った人達は何人もいたのに。
私が惹かれたのは狼のような目つきの彼だった。
背が高くクールな雰囲気があり、隣にいた両耳にいくつものピアスをした男の人と何かを話していた。
一目惚れ、だったのかもしれない。
「あの人達、佐々木海里と椎名深影。俺らの一個上で、すごい有名なんだよな」
私の視線に気づいた男友達が事細かに教えてくれて、彼の名前を知った。
じっと佐々木海里を見つめていたら、ふと彼の意識がこちらへ向けられ、一瞬だけ視線が結ばれる。
意志の強そうな眼差しに、心は当然のように奪われていた。
彼の瞳に自分を映してもらえた……。
それだけで、そのときは満足だった。
その後、一緒に来ていた友人達は別のグループに入ったため疎遠になり。
私は美愛や咲都達のグループと行動することが増えていた。
だからもう、佐々木海里の情報は得られず、頼るのは藤川しかいないという状況。