BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

そういえば、あの日。
椿高のイルミネーションの場に藤川の姿を見かけた気がするのだけれど、見間違いだろうか。



桜花の白い校門が目に入ってきたとき、そこに誰かを待っているしぐさをした女の子が3人ほどいて。

こちらに気づいた途端、藤川へ黄色い声を浴びせてくる。


「藤川さーん」
「こんにちはー」
「良かったらチョコ、受け取ってください!」


3人はそれぞれ藤川へプレゼントを差し出す。


────これが、藤川の言っていた用事?


顔をひきつらせ、耐えていると。
藤川が急に私と手を繋いできた。


いつものように手首を掴むのではなく、お互いの手のひらがしっかりと合わさっている。


「ごめんね。俺、大切な人ができたんだ。だから受け取れない」


申し訳なさそうに微笑み謝罪する姿に、私までもが顔色を変え、目を見開く。

普段の数倍、柔らかな話し方で。まるでどこかのアイドルのようだ。


「彼女さん……ですか?」
「なんだ……残念です」
「お似合いですね……」


口々に涙混じりの言葉を発し、しおらしく頭を下げ、下校していった。
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