BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「……ちょっと。何の真似?」

私は不機嫌さを隠さず、繋がれていた手を振り払う。


「ああ、一瞬、彼女のフリしてもらってただけ」

笑顔を消し真顔に戻った藤川は、淡々と答える。


「プレゼントを何個ももらっても、お返しに困るんだよ。
──はっきり言って、面倒」


吐き捨てた傲慢な台詞に、さきほどの3人の女の子達に同情をおぼえてしまう。

せっかく用意したプレゼントなのに。彼女達はきっと、受け取ってもらえるだけで喜んだはずだ。



「……あ。もしかして、あいつが小野寺理希か」


不意に藤川がぽつりと呟き、私も急いで彼の視線の先を追う。


門をくぐろうとしていたのは、遠目からでも目立つ赤茶色の髪の男と、たくさんのピアスを両耳に刺した派手な男。

ピアスの男は、確か椿高に行ったときに佐々木海里のそばにいた椎名という名前の男だった。


そして、その隣に肩を並べているのが、美愛が片想いしている小野寺理希──。

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