BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
二人は友人同士らしく、小野寺理希の方が楽しげに話しかけ、それに対し椎名深影の方がクールに相槌を打っている風だった。
小野寺理希は若干鋭さのある、くっきりとした大きな目で、長めの髪を揺らし人懐こい表情をしている。
イケメンで明るくて優しそうだし、美愛が好きになるのもわかる気がした。
「──今日は、相原優希奈さんとは一緒ではないんですね」
不意に藤川が私の知らない名前を出して声をかければ、二人は顔色を変え立ち止まった。
私達の着ている伯王高校の制服に目を止め、警戒の色を見せる。
「……優希奈に、何か用?」
視線を据え、慎重に言葉を選ぶ小野寺理希。
彼は優希奈という子と知り合いだと認めてしまっていた。
下の名前で呼んでいることから、近しい存在であることも読み取れた。
「彼女が桜花に戻ってきたと聞いたのですが。今は彼女、誰のものか……わかりますか?」
「……………」
小野寺理希は答える気がないのか眉をひそめたまま口を閉ざす。