BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「後悔してるの? 小学生のとき、セイちゃんをイジメてたこと」

「後悔? 昔のことなら、死ぬほどしてる」


自嘲めいた笑みを微かに見せ、藤川はゆっくりと語った。


「俺のせいで、七瀬は傷ついた。だけど傷痕が残っている事実は、今さらあのときのことを後悔したって……変わらない」


「……いいよ、別に。子どものときのことだから」


彼らしくなく、あまりにも辛そうな顔をするものだから、私はつい昔のことを許す言葉を口にしていた。


「このくらいの傷で、お嫁に行けなくなるってわけでもないし」


「……馬鹿だな、七瀬は。許されるはずのないことを許すなんて」


藤川は私の腕に唇を寄せ、傷を癒すかのようにそっと口づけた。


柔らかな唇と熱い息を腕の内側に感じ、ゾクゾクしてくる。


彼に触れられるのは不思議と嫌じゃなくて。

それがまた腹立たしく……何だか悔しい。


彼の思惑どおり、傷痕だけでなく心までもが癒されている、そんな気がしていた。

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