BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「俺と付き合えば四六時中、監視……じゃない、警護できるけど」
「……」
今、何か不審な言い間違いをしたような。
「結構です。好きな人に誤解されたくないので」
「好きな人……。そいつって、俺より強いの?」
「藤川先輩より?」
私は首を傾げる。
どうだろう。イメージ的には同等の立場な気がする。どちらが勝ってもおかしくない感じ。
「俺より強いなら、認めてやってもいいけど」
不遜な物言いをし、再び私の手首を握り直す。
「認めるも何も、この学校の人じゃないし。その人と私が付き合うとかは有り得ないですから」
「──えっ。ほんとに好きな男がいるんだな、お前」
やや吊り上がった鋭い目を意外そうに見開く藤川。
今まで単に、断る口実だと思っていたらしい。
「ふーん……」
何かを企むような目つきに変わった藤川は、私のことをニヤニヤと見下ろしてくる。
悪巧みを考えているその顔は、裏で覇王と呼ばれているにふさわしい表情で。
ものすごく嫌な予感がする。