BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「お前ら~~、何イチャついてるんだよ」
ゼイゼイと息を切らし、ぶちギレ寸前の咲都が入り口前に仁王立ちしていた。
鍵は閉めたはずなのに……
と思ったら、そういえば咲都達がさっきの男から鍵を取り返してくれるという手筈になっていたのを思い出す。
「こっちは重労働してきたっていうのに、お前らは……」
蒼生高の男はただでは返してくれなかったらしい。咲都の唇の端が切れていて、怪我を負ってしまっていた。
「大丈夫? 咲都」
慌てて駆け寄り、彼の無事を確かめる。
手の甲や目尻も赤くなっていたけど。
全て掠り傷程度で、大きな怪我はなさそうだった。
一番血の出ている唇の端をハンカチでそっと拭いてあげていると、咲都は私の肩越しへ目を向けながら、顔をひきつらせ始めた。
「お、落ち着けって皇世」
「?」
振り返ってみても別に異常はなし。
ソファに座って頬杖をつき、顔をそむけている藤川がいるだけ。
手当てを再開すると、ますます咲都は焦り出す。
「いや、だからさ。その目つき……。視線だけで殺されそうなんだって」
「なら、邪魔しないでくれる? 咲都クン」