BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
何やら不機嫌オーラを滲ませた藤川が私の隣に立ったとき、彼の電話が鳴った。
会計の谷原先輩に呼び出されたとかで、あっさりと生徒会室を出て行ってしまう。
私と二人になった咲都は、そのまま近くの席に腰かけ息をついた。
「七瀬。最近、皇世といること増えたよな」
「え、そう?」
「前はもっと、皇世に冷たくなかった?」
そう言われてギクリとする。
さっき……キスされそうな雰囲気になったとき。
私は全く、拒むことを忘れていた。
流されそうになっていた。
「あいつと付き合ったら大変だぞ? こうやって、狙われることも増えるかもな」
釘を刺すように咲都は忠告してくる。
セイちゃんと同じことを言われ、動揺が走る。
「つ……付き合うわけないよ。ありえない」
素直じゃない言葉。
「だって、人をいじめるような人、無理だから」
「…………」
咲都は黙ったまま、窓の外の夕暮れへ視線を据えている。
「小学生の頃に、セイちゃんがコウ達にいじめられてたでしょ。覚えてる?」
「ああ……そんなこともあったな」