BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「……藤川先輩が中心になっていじめてたの?」


咲都の向かいの席に座りながら、そう聞きつつも。『コウ』が藤川じゃなかったらいいな、なんて都合の良いことを願い始めていた。


「いじめる、ね……」


私の口にした言葉を反芻し、咲都はどこか哀しげに笑う。


「あいつは基本的に、弱い者をいじめるタイプじゃないだろ?
──昔から、優しい」


優しい……?

思い返してみれば、藤川の親友──咲都の幼なじみである私をわざわざ助けてくれた。

親友だけでなく、生徒会のメンバーのことも特に大事にしていると聞いたことがある。

それに、人望がなければ生徒会長にはなれないはずだ。


「過去はどうあれ、“今”が大事なんじゃないのか? 小学生の頃の話は、七瀬にとって、まだ時効とは言えない?」

「時効……」

「七瀬と会っていない5年間で、だいぶ皇世も変わったと思うぞ」


確かに、昔の『コウ』のイメージとは微妙に違う。

『コウ』はもっと悪ガキで、いつも先生に怒られていた印象。

5年も経って、少しは丸くなったのだろうか。



そういえば……。


「藤川先輩が高1のとき、女の子と遊び放題だったって噂は本当?」

「あ?」


咲都はなぜか首をひねり、瞬きを繰り返す。
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