BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「本人も否定してなかったよ?」
「それは色んな女と遊んでたっていうより、誰と付き合っても3か月以内で別れてたから、そう見えたのかもな」
「……じゃあ、不特定多数と遊んでたわけじゃないんだ」
一応、一人一人と真剣に付き合ってたってこと、なのかな。
藤川に『サイテー』と貶してしまったのは、言いすぎだったかもと反省する。
「俺は……あいつほど一途なヤツは見たことないよ」
「えっ、ほんとに?」
藤川が一途?
「高2になってから、あいつがなんで彼女作ってないか、わかるか?」
私は無言で首を横に振る。
普通に、特定の彼女を作らず自由に遊んでいたいからだと想像していた。
「七瀬がこの学校に入学してきたから…………って、まあいいや。この話は」
言葉を途中で切った咲都は、急に立ち上がり「帰るぞ」と言って私のことを促してきた。
「何? 曖昧にされたら気になるんだけど」
「そのうち、わかるだろ。きっと」
誤魔化すように、咲都は私の頭をポンポンと撫で、生徒会室を出て行った。
私はため息をついて彼の後ろを歩く。
咲都と話して、藤川のイメージが少しずつ変わってきた気がする。
もっと彼のことを知りたいと思えるほどに──。